決裁板にケース記録をもって、相談員が「おかしくないですか、これ。これってほんとにおかしいですよ」と私に訴えるので、市がどういう判断をされたのか、電話して聞きました。

ある方が病院に運ばれて意識がない。年金があり資産もあることは分かっているけれども本人に意識がないので本人の意思確認もできず本人のお金に触ることができない。このような場面で病院のソーシャルワーカーが急迫保護を市に求め、市が職権で生活保護の適用しました。本人には今は触れないけれどもお金があるので成年後見人が就任しお金が触れる状態になったら、生活保護法63条に基づき本人に医療費の返還を求めるのですが、この場合の返還額がなぜか、保険適用のない10割負担の金額なのです。

1週間の治療費が300万円にもなると聞いておかしいと思うのが、自然だと思うのですが、病院のワーカーさんも市の生活保護担当も上記の流れをやってしまうのです。

市の担当に話を聞くと、ご本人の負担が大きくなることはもちろん承知で、ただ、病院からそのようなことを言われると急迫保護をせざるを得ないとの結論となったとのことです。この間、近隣市町にも県にも相談されていたということなのでご本人のことを思い慎重に判断をされたものと思いました。

じゃ、病院のワーカーさんの方に話を聞きますということで電話を切ったのですが、制度の問題なので、「やっぱり国会議員に話をしよう」ということになりかけましたが、あいにく国会議員を存じあげない。

そこで、二人でネットで調べているうちに、「生活保護法63条による『医療費10割返還』を違法とした東京高等裁判所判決」というのを見つけました。おお、これだー、2021年1月号の「実践成年後見」に弁護士さんの解説が掲載されているということで、書棚の当該誌を取り出して読みました(定期購読していてよかった)。区役所側が上告せず、確定した判決だそうです。

もちろん裁判なので個別事案に対する判決とは思いますが、この解説を読むと決裁板の上の私たちのケースにもあてはまりそうでした。

市は、この判決を知っていても急迫保護はされたのでしょうけれど、63条返還はどうされるのかな。あした、市の担当者にきいてみようと思います。

結局は、国の制度が変わらないといけないと思うのですが、国はこの判決を受けてなにか検討されているのかな。

高知市社会福祉協議会がされている、「これからあんしんサービス」というのが、こういうケースに使えそうでした。
30万円(10万円×3か月)を預託しておくのだそうです。高額医療費制度を使えば10万円でなんとか払えて、3か月あれば後見人がなんとかつくのではということだと思われます。

当地の社協さんもこういうことをやっていただければいいのですが、自分たちでもできないか検討してみたいです。