「にちじょう」、あるいは、地域によっては「にちじ」、と略されて称される「日常生活自立支援事業」という、各社会福祉協議会が実施されている事業があります。

成年後見制度と同じく、対象となるは、認知症の人、知的障害のある人、精神障害のある人などで、日常生活を送るのに少し判断能力に不安がある方ですが、福祉サービスの利用の支援や日常生活上の諸費用の支払い代行、行政手続きの代行、金銭、重要書類の預かりなどのサービスを行っています。

ちょっとややこしいですが、ご本人は判断能力に心配はあるが、この日常生活自律自立事業の契約の内容が理解できる程度には判断能力がある、ということが必要です。

成年後見制度は、権利制約の側面もあるため、それなりに大変な手続きがあり、診断書が必要であったり、一度使いかけるとやめられなかったり、報酬がそれなりに高かったりというのに比べ、「にちじょう」は、比較的簡便な手続きで、日常レベルの困ったことに対応してもらえるというメリットがあります。

先日、行政の担当の方といっしょに相談にこられた方は、一人暮らしをできている方なのですが、知的障害の手帳を持っておられる方で、とても気持ちの良い方で逆にそこを悪い人につけこまれて、相当の額のお金をだまし取られたり、貸したままになっているということです。

成年後見制度を使えば取消権とかあって、騙されてリフォームなどを契約しても救済もできて安心なのですが、手続きやその後の費用のことなど説明をするとなかなかご本人にとっては、はい、やります、とは言いにくい重い制度です。ひとり、あなたに援助してくれる人が付きますといっても、それが誰になるか分からないし、一生その人がついてまわると思うとなかなか、思い切れないと思います。

結局、その方も、「自分で通帳は管理できるのでいいです」とお断りがありました。では、せめて「にちじょう」を使って、いくつかある通帳のうち、大きな額がはいっている通帳だけは預かってもらってはどうですか、という話になって、詳しく社協の担当の人に話を聞くと、通帳とかを預かるのは年3千円、支援員と言われる人が動いてお金を引き出して届けてくれるというような場合には1回につき1,200円かかります。しかし、年間20万円ぐらいの報酬が必要な成年後見制度にくらべて圧倒的に安いですし、一度やりはじめてもいつでも契約をやめにすることができる気楽さもあります。

これならとご本人は申込書をかかれました。成年後見制度と同じく、この事業もあまり普及しているとはいえません。権利擁護支援を進めるとき、成年後見制度とあわせて、日常生活自立支援事業もしっかり進めたいと思いました。